旅をする音楽・WorldScapeのこと
第6回「3rd Album WORLDSCAPE Euro-oriented 解説その2
---各曲解説 Colours of Asia -introduction-/Ritual Fire Dance/Cinematique」

久しぶりの更新になってしまいました。前回はアルバムコンセプトみたいな話でしたが、そこらへんはまた後で話させてもらうことにしまして、先に各曲の解説のほうをしてみようと思います。実際の曲に即しての話の方がたぶん分かりやすいですし。ということでスタート♪

Tr1:Colours of Asia -introduction-

アルバムのテーマ「Euro-Oriented」の象徴ともいえる"Colours of Asia"は、アルバムの冒頭と最後の曲になっています。
1曲目のほうのintroductionはオリジナルよりかなりBPMを落としたアレンジで、メロディーは同じなんですが新しいコード進行に変わっています。曲タイトル通りアジアっぽい情景を想起させるような響きになっていると思います。ところで先日あるラジオに出演させて頂いた時、パーソナリティーの方に「アルバムを聴いたらアジアっぽいオリエンタルな感じがしたんですが、こういう雰囲気ってどうやって出すんですか?」と聞かれ、ちょっと言葉に詰まりましたね・・・どうやって、って?説明難しいよね、エスニック料理作るのとはちょっと違うからなあ・・・

演奏はRTの2人です。竹内さんがヴォーカル、そして機械っぽい声は彼女の声をKORGのシンセサイザーでプロセスし、Vocoderっぽい音を出しています。シンセベースはAKAIの昔のシンセサイザー。AKAIというとサンプラー、特に最近はHip-Hop/DJサンプラーであるMPCのイメージが強いですが、その昔はアナログオシレータのシンセを出していて、それが結構良いんです。いつ壊れるか心配ですが愛用しているシンセの1つです。他のシンセやストリングスはほとんどE-muのサンプラーとソフトシンセを少々、あとピアノをちょこっと弾いています。


Tr2:Ritual Fire Dance (Future-Red Mix)

スペインの印象派の作曲家、Manuel de Fallaが1915年に作曲した「恋は魔術師」というオペラの中の1曲です。多分ファリャのなかでは最もメジャーな曲なので、タイトルは知らなくても聴いたことのある方は多いのではないでしょうか。ピアノバージョンではルービンシュタインの豪放磊落な演奏が有名だと思います。
ファリャのルーツであるスペイン〜アンダルシア風の民族的なメロディーの音使いとフランス印象派のモーダルな和声感が見事に融合しており、ドビュッシーやラヴェルが到達し得なかった鮮烈な響きを得ることに成功している曲です。僕が初めてこの曲を演奏したのは高校時代に参加していたマンドリンオーケストラで、その後も小編成のオケやジャズバンドでアレンジして演奏したりと昔から好きな曲でした。

今回アルバムで取り上げるにあたり、クラシックの世界でオーケストラやグランドピアノ、クラシックギターなどで既に表現しつくされている鮮やかなダイナミズムを、ダイナミックレンジの狭いシンセサイザーやプログラミングの手法でどう新しく聴かせるかということで試行錯誤を重ねました。好きな曲なのでなおさらプレッシャーも大きいという(笑)

まずクラシックのダイナミクスと渡り合えるものとして強力にヒップなベースラインとビート、しかも民族的なメロディーを活かす為にありきたりなブラックルーツのファンクやハウスものでない独特なうねりをと考えました。そして出てきたアイディアが、もともと2拍子に乗っていたオリジナルのメロディーを8分の6拍子に再構成し、ジャズワルツ的なグルーヴを持つファンクを民族的色彩感のあるシンセパーカッションと粘りのあるシンセベースで創りだす、というものでした。それが曲前半に見られるあのアレンジです。シンセベースはAKAIのアナログシンセを使い、Moogっぽさを残しながらアーシーになりすぎないサウンドに、ピアノはファンクのグルーヴ感を出す為に切れのいいウーリッツアーを使っています。

そしてもう一つの大きなポイントはあの民族的なメロディーをどう鮮やかに響かせるか。アナログシンセでは色彩感が足りず、サンプラーは所詮生楽器を録音したのをプレイバックするものなのでダイナミックレンジがかなうわけがありません。生楽器と同じく、弾く瞬間にそこでサウンドが生成されているものでなくては・・・いろいろ試した結果、80年代のFM音源によるシンセサイザーの金属的な倍音を活かしたプログラミングでサウンドを作りました。YAMAHAのFM音源モジュールTX800シリーズを使ったのですが、いわゆるデジタルシンセのイメージからほど遠い、太く色彩感のあるサウンドが出るのには本当に驚きました。曲中で聴かれるテーマメロディーの90%はTXモジュールで作っています。レコーディングは80年代SoundCraftコンソールのプリアンプ、Presonus ADL600 Tube Preを中心に、トーンのキャラクターを使い分けています。Soundcraftはオープンさと太さがバランス良い、どちらかというと乾いたサウンド、ADLは芯のある深く奥行きのあるサウンド。まさに対照的ですがどちらも独自のキャラクターのあるトーンを持っています。

竹内さんはメロディオンとスキャットヴォーカル、メロディオンはメインテーマをYAMAHA TXとユニゾンで、メロディオンらしからぬオリエンタルなサウンドを奏でています。そして彼女ならではの抜群のグルーヴとキレのあるスキャットは、特にテンポアップした後半のテーマ、そしてBPM170近くまでテンポアップするエンディングのAccel部分で聴くことができます。


Tr3:Cinematique

オリジナルはかなり昔の曲なんです。僕の中でもしばらく忘れていた曲だったのですが、Euro〜をアルバムテーマに据えて、ヨーロッパだとやっぱりクラシックだな、クラシックならワルツ、3拍子の曲は入れたいなあ、ジャズワルツっていうのもヨーロッパっぽい薫りがするなあ、なんてことを考えている時に存在を思いだし、収録することにしました。
作曲時のオリジナルタイトルは「Sweet Revenge」。甘美な中に潜む憎悪の炎、みたいなイメージを喚起して作った曲です。メロディーに5th、9thという洗練したイメージを醸し出す音を使いながら、全体としてモーダルになりすぎずにルーツミュージックを感じさせる色彩感やぐっと来る情熱的な感覚を同時に存在させる、というのが作曲時のテーマでした。作曲時のオリジナルに加えてソロ前のブリッジの進行、そしてソロ部分の転調をアレンジとして追加しています。

曲中間部の大田和君のソロは秀逸で、この曲の持つ憂いある雰囲気を大いに盛り上げてくれました。実は彼にはこの曲が出来たばかりの時にも弾いてもらっていて、その時もこの曲独特のコードチェンジへのアプローチが好きだったというのもあります。
ギターの森永君とドラムスの由希子ちゃんはヨーロッパ的なジャズワルツ、ジプシージャズ的なイメージを上手く表現してくれています。彼らは普段一緒にプレイしていて、僕の感じではアメリカ的ジャズというよりヨーロッパ的な感覚に秀でていると常々思っていたので、お願いしました。森永君はObation Adamas、由希子ちゃんはYAMAHA Recording customを使用、リズムセクションに関してはFostexの昔のアナログレコーダーを使いテープスピード38cm/sで収録しています。

チェロの夏秋さんはクラシックの分野で活動されている方で、ピアソラ的サウンドにはここはバイオリンなんでしょうが、僕はもう少し低いサウンドのチェロが欲しかったんです。曲タイトルのCinematiqueはCinema+Antiqueから来た造語なんですが、そのアンティーク¬というか、クラシックな重さと色彩感を兼ね備えたトーンはチェロでしか出せないのではと。夏秋さんには前に僕の曲を聴いてもらっていて、とても気に入ってくれていたというのもあってお願いしました。エモーショナルになりすぎない、敢えて抑えた演奏がオリジナルタイトルにある「潜む憎悪」を感じさせます。ブリッジ部分はチェロのトレモロを4本オーバーダビングしたりとレコーディング段階でアレンジの試行錯誤もいろいろあり、印象に残るレコーディングでした。
RTサイドは竹内さんのメロディオンは SuzukiのPro v2をBlueのステレオペアのマイク、プリアンプは80年代後期のSoundcraftコンソールからBBC /Neve AM6/17aのコンプを通して収録しています。このアルバムの8割はこのパターンですね。
僕はピアノ全般と、シンセ、サンプラーはいつものAKAI、E-mu陣に加え、この曲ではRolandのヴィンテージストリングスシンセ、RS-09が大活躍しています。シンセストリングス部分の元音はチープなんですが、内蔵コーラスがRolandのJazzChorusのサウンドに似た独特なコーラスで(時期的にも同じアルゴリズムか?)、あとエンベロープの調整が利くのでいわゆるストリングスシンセのイメージを覆す幅広いサウンドが作れる機種です。ブリッジ部分の雪が降るようなシンセアルペジオのサウンドをはじめ、バックグラウンドのストリングス等各所で使用しています。90年代〜最近の機種では得難い存在感です。

この曲はアルバムの3曲目ですが、2曲目が何と言ってもあの「火祭りの踊り」ですから、その次に聴かれる曲として希代の名曲に遜色のないレベルに近づけなくては、というプレッシャーもあり、結果として自分としてはかなり気合いの入った仕上がりになっているかな、と思っています。


(つづく)


旅をする音楽・WorldScapeのこと
第5回「3rd Album WORLDSCAPE Euro-oriented 解説その1
---『まんまRT』ではない、初のコンセプトアルバム」

2005年から1作目、2作目と作ってきて、3枚目を作るにあたって、
自分たちが作ったアルバムというのは作り終わった後はあんまり聴かないのですが

(出来上がるまでにあまりにも聴きすぎているからです)、いちおう聴き返してみました。

感想は
「・・・独特だな〜こりゃ。」

作っているときは、これまでに深く愛し影響を受けて自分の中に取り込んできた音楽を、なるべく純粋に出てくるままに形にしていこう、
というだけなんですが、結果出てきたものを時間を置いて客観的に聴いてみると、そんなだったわけです。
まあ制作過程でいろいろ実験はしてますし、メジャーレーベルとは違ってプロデューサーやらディレクターやらタイアップスポンサーの社長からの様々な制約を受けることなく作られているので、オリジナリティーがフルに発揮されているのかも知れません。
(そういえばMyspaceでも外国の方から「これまで俺はいろんな音楽を聴いてきたが、おまえのはどれにも似ていない」的なメッセージを結構もらいました)

そこで3枚目について考えたことは、
一つは前にWeb配信限定のEuroscapeのリリース時にも書いた通り、やはり「RoundTripp」というグループ名=コンセプトでやっている意味をしっかり反映したいということ。
もう一つはこれも前に書いた「自分のルーツ問題」で、確かに「生活文化的に見た純日本人」というルーツはないんだろうけれど、人種としてのルーツは間違いなくあるわけで、そうすると欧米人とは違う人種が欧米音楽を取り込むときの捉え方というのはやはり何かしら違う気がするんです。
その違いを自分なりに意識してみる---これまでの作品で定義づけられた「クラブジャズ、ソウルファンク系クリエーター」的なものをいったん取り外して、どんなのが出来るのかというのをやってみたいということでした。

(つづく)


旅をする音楽・WorldScapeのこと
第4回「音楽で旅をする。音楽が旅をする。」

ということで、
「自分のルーツ問題」は、まあこんな風な結論になった訳なんですが、
いざ結論づいてみると、「ルーツがない」というのもこれはこれで気楽というか、
どこにも拘束されていない、自由であるということなわけで。
なんか肩の力が抜けて、ホッとした感じ・・・

そしてそのうちに、
どこに行ってもいいし、どこの音楽を取り入れてもいいというのは、実はなかなか楽しいのではないか? と思い始めました。

頭の中に地図を思い浮かべてみる。
地球儀を前に置いて、クルクル回しながら眺めてみるのでもいい。
地球上のある位置をイメージしながら・・・

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「いま僕はここにいて、ここの音楽を聴いている」
「こんな音の感じを、自分なりにやってみよう、作ってみよう」
「・・・うん、確かに本物とはちょっと違うけどさ、これはこれでいい感じなんじゃ
ない?」

気が向いたら、その国はさようなら 「また遊びにいくからね!」
そして次の場所へ・・・

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こんな感じで、音楽で旅をすることができる。
旅に行った先で、音楽を作ることもできる。思うままに! 自由自在に!

それは例えば、いろんな国のすてきな花を摘んできて、この世にまた一つとない
花束を作るような感じで、作れるのかもしれない。

そして、そんな風に出来た音楽がまた一人歩きして旅に出て、
誰かに聴いてもらうことができて、
それを聴いてくれた人が、また別の旅に出ることができたら、なんかうれしい気がするなあ!

「旅をする音楽」のイメージは、こんな感じでスタートしました。

(つづく)


旅をする音楽・WorldScapeのこと
第3回「超えられない壁」

と、まあそんな感じで21〜22歳周辺の音楽ライフは矢のように過ぎていったわけなんですが、 果たしてそういうことを続けているうちに、少しはルーツは見えたのかというと・・・

結論から言うと
「月は近づけば近づくほど遠くなる」ってことを、身をもって知ったのでした。

つまりいろいろ研究して分析してディテールがはっきりしてくればしてくるほど、自分との違いがベールがはがれるようにはっきりしてくるわけです。

例)1970年代〜80年代初頭のエイブ・ラボリエルの音
(たぶんベーシスト以外分からないと思います。ニッチですいません)

うーん、この音はギターみたいに軽くて指の平で弾いている音じゃないな・・・
複数の弦がジャラーンと鳴ってるから、たぶんこれはフラメンコギターみたいに爪の側で弾いてるのか?
じゃあ爪で弾いてみるか・・・うーんなんかぜんぜん音色違うな・・・
音は弱々しくて細いし、全然スピード感ないしな・・・
そもそも爪の大きさとか形とか材質(固さ)とか違うんじゃねえか?

この16分音符の1つめと4つめ、同じ爪だけど全然ニュアンスの違う音色だな・・
うわ、よく聴いたら毎回音色違うわ・・・フレーズ自体は同じでも2回と同じ音色がないな・・・

もう2時間やってるけど、まだサビまでコピーできてないや・・・

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例えばもし仮にラリーグラハムに弟子入りすることができたとしたら、 もしかしたら(すごい長い時間をかけて)そのグルーヴ感を体得する事はできるかも知れないし、 弟子になれなくても彼らのCDをPCに取り込んでタイム感やアクセントなどを分析して数値化し、グルーヴテンプレート(ひな形)を作って、それをまねることは出来るかも知れない。

でもそれは何と言うかもう、そもそも違うんですね。
少なくとも彼らはそういう風にそれを体得したわけじゃないし、 もっと言えば「体得(=実際に自分で経験することによって、その本質を良く理解する)」すらしていない。

もともと彼らの中にある、本人でさえどういうものか良く分からない「何か」が、 「得る」んじゃなく、「生み出して」いるわけで。

それを生み出す元となる「何か」が、すなわち「ルーツ」であるということに気づいたんです。


(つづく)


旅をする音楽・WorldScapeのこと
第2回「ルーツを探して」

日本に帰ってからも、この「自分のルーツ問題」はしばし頭を離れませんでした。
しかしルーツっていってもねえ・・・
ただでさえ簡単に答えが出る問題ではなく、しかも当時は物事を深く考えることもない20歳の大学生ですから、

●信じる宗教→無い(母親はクリスチャンで日曜ごとに教会に行っていて、その送り迎えをしていたので「あなたも1回来てみたら」と言われて行ったはいいものの、ものの見事に爆睡し「周りの人に恥ずかしいからもう来なくていいわ」といわれた経験あり)

●日本の着物→ホテルや旅館の浴衣すらいつも適当な着方ですが、それが何か?

唯一自分なりにまじめにやっていた(つもりの)音楽に関しても、特にそういうことは意識せずに何となく頼まれるものや好きなものを演奏しているだけだったので、
かといって今さら日本の民謡とか伝統芸能をルーツっていっても・・・正直まったく実感が湧かないという。

そしてその後、何となくイライラするというか、焦るような気持ちになりました。
自分はただ流れにまかせてきて、何も考えてなかったなあ、とか
よく考えたら、ほんと狭い世界の人しか知らないなあ、とか。
時にはそんな自分自身をたなに上げて「日本人とは何と根も葉もない、よくわからない人種なんだろう」と思ったりとか。

ということで、
このころから所属していた大学やサークルの枠を外れ、いろいろなコミュニティーやサークルに参加しはじめました。
何十万もする自己啓発セミナーみたいなものにバイト代の大半をつぎ込んで、長期合宿に参加したりとかもありました。

音楽では大学でのバンドやオーケストラでの活動と並行して、とにかく自分が良いと感じた楽曲をジャンル問わずひたすらコピーして、分析して譜面にして、シーケンサーにプログラミングして・・・というのを徹底的にやり始めました。
あと今は無き六本木ピットインをはじめ、都内ライブハウスにひたすら通いつめました。ほとんど一人で(笑)

無いものはしょうがない、自分で作るしかない!ということで、何とか血肉化したかったんですね。
自分のルーツ(血と肉)を自分なりに確立したくて、焦って、もがいていた時期だったと思います。

(つづく)


旅をする音楽・WorldScapeのこと
第1回「海の上にいる自分」

12/12に「Euroscape Vol.1」がリリースになり、RoundTrippの新シリーズ「旅をする音楽〜Worldscape」が始まります。

RoundTrippという名前は「旅(=roundtrip)」から取ったもので、
どこにいても聴くだけでその音が持っている世界にトリップできるような――僕はそれが音楽の一番素晴らしい所だと思っているので――そして実在するしないにかかわらず「いろいろな世界の音」を感じることができるものをつくりたいという気持ちからつけました。
そして何といっても「旅」ですから、自分の気の向くままに、好きなスピードで活動していけるプロジェクトとしてやっていければということで。

そんなRoundTrippの本格活動スタートが05年3月でしたが、
「アルバムをだしませんか」というメールがきたのがその4ヶ月後の7月。そのリリースは9月だったので8月上旬の締め切りまでに9曲を何とか仕上げて精一杯、アルバムタイトル通り「First Destination=最初の到達点」に滑り込みセーフという感じでした。
そしてリリース後はメディア出演、インストアイベント等の初経験のラッシュが始まり、そのスピードに乗って動いていくうちに、時間がなかった故の1stへの不満もあり「自分たちなりに満足のいく次の作品を早く作りたい」という気持ちのスピードも高まっていきました。2nd「Fly to Possibility」は「可能性への飛躍」という意味で、その時のある種はやる気持ちを率直に反映したタイトルだったとも思います。

そんなこんなで、RoundTrippはスタート時のコンセプトとはいろいろな意味で少し違う所に流れてきてしまっていたのですが、
今回の新シリーズから、ようやく「旅」に出ることができました。

そんな嬉しさも手伝って、
これからのRoundTripp「旅をする音楽」にまつわる話を、
不定期ですが、少しずつ書いていこうと思っています。

さて、旅と言えばですが、
僕が生まれて初めて「旅らしい旅」――これはつまり行程中に親とか、パックツアーの添乗員とかがいない自由な、という意味です――をしたのは、20歳のときでした。
メンツは男2人、行き先はアメリカ――ワシントンDC、シカゴ、ニューヨーク、マイアミ、ニューオーリンズ、サンフランシスコ――約3週間。
いろんな思い出があります。マイアミからキーウェストのホテルまでレンタカーで行こうと目論んでいたら、大手レンタカー会社では21歳以上でないと借りられず、インチキ英語でマイアミ周辺のレンタカー屋をしらみつぶしに回って交渉し、名も知らぬ怪しげなレンタカー会社から「これしかないけど、いい?」とバカでかいダッジバンを借りることができ、「ラッキー!」と喜び勇んでドライブしたり、
ワシントンDCのバーで、酔った勢いでバーのピアノで見知らぬ黒人と「Isn't she lovely」を連弾セッションしたり、
NYで初めてのBlue Note、Village Vanguard、特にVillage Vanguardで夜中12時半からのthird setを見たときの興奮、
ゲイのカップルがひしめく午前3時のNY・・・
まさに勢いだけで行動し、毎日が感動の連続だったのを憶えています。

そして楽しかった旅も終わり、帰途の飛行機の中。
いわゆる「トラベラーズ・ハイ」の反動というのが見事にやってきて、
生まれて初めての何とも言えぬ気持ちに襲われたんです。

「自分って、何者なんだろう?」

アメリカで話をした人たちは、みんな強力なアイデンティティーを持っていました。
言葉に淀みがなく、自分の信じるもの――それは宗教であったり、音楽やファッションであったり、ライフスタイルそのものであったリ――が明確で、強い主張がありました。

それに比べて自分は日本人としてなんかそういうものってあるかな、というと・・・そんなの意識すらした事なかったという。

信ジル宗教ッテアリマスカ?
仏教、儒教、キリスト教ノ違イッテ知ッテマスカ?
日本ノ着物ステキデスネエ?、トコロデ自分デ着レマスカ?帯ノ正シイ結ビ方、知ッテマスカ?
日本ノトラディショナルナ音楽ッテ?・・・「春ノ海」?「赤トンボ」??・・・エ、J-POP(笑)

・・・いろいろなことがぐるぐる頭を回ります。

奇しくも飛行機の中で、海の上を飛んでいる。
自分は「海の上にいる人」みたいな気がしました。

たぶんこれが「自分のルーツって何だろう?」と初めて意識した時だと思います。

(つづく)

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